DXを勘違いしていませんか?
新しくシステムを入れ替えて業務が効率化した!わが社はDXを推進しているぞ!
これ、勘違いです。システムを入れ替えて業務効率化を図るのはDXではなく、ただ単なるIT化です。
では、 本当の意味でのDXとは、一体どのようなものなのでしょうか。
DXとは?
DX(デジタルトランスフォーメーション)は「デジタル変革」と訳されます。しかし、トランスフォーメーションは本来、イモムシがサナギになり、サナギがチョウになるというように、形が全く異なるものに変身することを意味します。
つまりDXとは、デジタル技術を応用してビジネスモデルを全く異なるものに変身させることをいうのです。
では、なぜ企業は別物に変わらなくてはならないのでしょうか。
今、既存の産業が脅かされている
まだ実感はないかもしれませんが、今、既存の産業がデジタルネイティブ企業によって脅かされています。デジタルネイティブ企業とは、新たなビジネスモデルを展開してそれまでのビジネスのルールを全く変えてしまう新規参入者のことです。
例えば、デジタルネイティブ企業のUberは自家用車が利用されない時間が90%以上あることに着目して、タクシーが不足しているエリアでドライバーの空き時間をお金に換えるサービスを提案しました。これにより、そのエリアでは価格破壊が起こり、タクシー業界が窮地に追いやられてしまいました。
この例ようにデジタルネイティブ企業に産業を脅かされてしまう前に、企業は別物に変わらなくてはならないのです。
世界で進むDX
アメリカや中国では社会システムのデジタル化によって、スマートフォンを活用した新たなアプリケーションが生まれ、DXが加速しています。
例えば、中国のほとんどの飲食店には紙のメニューは存在せず、机のQRコードを読み込んでスマートフォンに表示されたメニューで注文できるようになっています。もちろん決済もスマートフォンで済みますので、注文から会計までデジタル化されており、注文時も会計時もミスやわずらわしさがありません。
他にも、青島では無人のコンテナーターミナルが常時稼働し、杭州ではAI自動交通管制システムが導入され、深センでは無人タクシーのサービスが開始されています。
DXが進むのはアメリカや中国だけではありません。
ケニアでは、貧しい農村部の人々はかつて銀行などの金融サービスを受けづらい状況にありました。しかし、モバイル金融による送金サービスの急速な普及により、銀行が無くても困らない社会になりました。
世界ではアメリカ、中国を中心としてDXが進み、新興国が新しいテクノロジーを用いたサービスを導入して、先進国よりも進んだ社会を実現する「リープフロッグ現象」が起きているのです。
日本のDX事情は…「2025年の崖」
一方、日本に目を向けてみると、コロナ禍で突如デジタル化が必要とされたことでDXの認知が一気に進んだものの、多くの企業が対応しきれていません。
様々な実態調査を見ても、新型コロナの影響でデジタル化が強化されたとした割合が最も高かった従業員規模1,001人以上の企業でさえ、DXの取り組み内容は業務の効率化による生産性の向上(=単なるIT化)が中心となっており、多くの場合ビジネスモデルを変えるところまでは至っていません。
世界では、あらゆる産業で新たなデジタル技術を活用して全く新しいビジネスモデルを展開し、既存産業を破壊する事態が次々に起きています。これに危機感を覚えた経済産業省は、2018年に「DXレポート」を発表しました。
DXレポートには、DXの必要性やDXの推進を妨げる弊害が明記され、DXを成功させるために超えなくてはならないITに関する課題がまとめられています。これは「2025年の崖」とされ、複雑化、老朽化、ブラックボックス化した既存システムが残り続けることやDXに適したスキルを保有している人材が圧倒的に不足していることが特に大きな課題とされています。
そして、2025年までにこの課題が解決されなかった場合、DXが実現できないのみでなく、国の産業全体で毎年12兆円の経済損失が生じる可能性があるとされているのです。
また、世界的なコンサルティングファームであるマッキンゼー・アンド・カンパニーの調査では、何も手を打っていない伝統企業や、新たな市場で活路を見出した伝統企業に比べて、DXを進めている企業の方が高い成果を出していることが示されました。
企業として成果を高めるためにも、DXは大きな課題であると言えるでしょう。
ビジネスモデルを変えるのがDX
DXとは、デジタル技術を応用してビジネスモデルを全く異なるものにに変えてしまうことです。ビジネスモデルとは、顧客が求める価値を見つけ、それを提供して利益を上げる仕組みのことです。
生活が豊かになるにつれて顧客が求める価値は変化し、世界的に共通化し始めています。 DXにIT・ICTは欠かせないものですが、DXにおいてこれらは手段でしかありません。IT・ICTで単に業務効率化や生産性の向上を行うのではなく、これらを活用し、変化する価値を見直して、成長のスピードとスケールを最大化できるビジネスモデルを戦略的に作り上げていくことが最も重要なことなのです。